(37) 大高よし男の公演記録(1) 昭和15〜16年

調査が行き詰まっているところで、これまでの調査で判明した大高よし男(高杉彌太郎)の公演記録を整理してみたいと思います。

僕の調べた範囲で、大高よし男(高杉彌太郎)の名前が初めて登場するのは、昭和15年3月の横浜敷島座、近江二郎一座の興行を報じる新聞記事。一方、終戦前の最後は昭和18年5月、京都三友劇場における伏見澄子一座への加盟(助演)の記録です。

この間、横浜にはのべ12ヶ月、川崎に1ヶ月半、東京に1ヶ月、京都に7ヶ月滞在していたようです。約3年間のうちの3分の1以上を横浜・川崎で過ごしているわけですから、既述の通り、この地域との縁は深くなるだろうし、横浜に家を構えていてもおかしくない気はします。

そんなこんなで、さっそく公演記録の前半、昭和15年と16年の分を列記してみます(ちなみにこの時期の芸名はまだ「高杉彌太郎」です)。


大高よし男公演記録(1)


昭和15年

2月29日〜 横浜・敷島座
酒井淳之助一座・近江二郎一座合同公演 川上好子加盟
『子は誰のもの』
『■■■■舟』(「帰雁一葉舟」か?)
『人生双六』
〔昭和15年2月29日付・3月3日付横浜貿易新報より〕


3月7日〜 横浜・敷島座
酒井淳之助・近江二郎合同公演 川上好子特別出演(二の替り)

『黒髪峠』四場
現代劇『海の王者』四場
『旗本と町奴』二場
籠寅まんざい
〔昭和15年3月7日付横浜貿易新報より〕


3月14日〜19日 横浜・敷島座
酒井淳之助・川上好子・近江二郎合同公演(三の替り)

『淡路島水滸傳』六場 ※高杉彌太郎出演の記載あり
新派劇『逆巻く浪』五場
『呑気な用心棒』
籠寅特選まんざい
〔昭和15年3月14日付・3月17日付横浜貿易新報より〕


3月21日〜 横浜・敷島座
酒井淳之助・川上好子・近江二郎合同公演
『故郷の山河』四場
『光り世界』四場
『變化七分賽』
籠寅特選漫才
〔昭和15年3月21日付横浜貿易新報より〕


4月(20)日〜 横浜・敷島座
酒井淳之助・川上好子・近江二郎合同公演
『娘やくざ』四場
『二筋道』三場
『時雨笠』五場
〔昭和15年4月20日付横浜貿易新報より〕


5月1日〜 横浜・敷島座
酒井淳之助・川上好子・近江二郎合同一座
剣劇『裏切者』五場
新派『沈丁花』七場
時代劇『辰巳の夜嵐』五場
〔昭和15年5月3日付横浜貿易新報より〕


5月15日〜 横浜・敷島座
酒井淳之助・川上好子・近江二郎合同公演
女剣劇『佐渡おけさ』五場
新派『放浪の人々』六場
剣劇『元禄秘刃録』三場
籠寅まんざい
〔昭和15年5月19日付横浜貿易新報より〕


5月29日〜 横浜・敷島座
酒井淳之助・川上好子・近江二郎合同公演

新派劇『己ケ罪』
剣戟『百両飛沫』
『悲戀小櫻お玉』 ※高杉彌太郎出演の記載あり
籠寅特選まんざい
〔昭和15年5月31日付・6月1日付横浜貿易新報より〕


6月12日〜 横浜・敷島座
酒井淳之助・川上好子・近江二郎合同公演

時代劇『加茂の夕映え』二場
裁判劇『喜久子の審判』
現代劇『暁の牧場』 ※高杉彌太郎出演の記載あり
時代劇『刃傷情夜話』
籠寅まんざい
〔昭和15年6月14日付・6月18日付横浜貿易新報より〕


6月19日〜 横浜・敷島座
酒井淳之助・川上好子・近江二郎一座
喜劇『青春』一幕
時代劇『天人お松』二場
現代劇『網代木』一幕
剣劇『次郎長の賣出し』四幕
籠寅まんざい
〔昭和15年6月20日付横浜貿易新報より〕


6月25日〜29日 横浜・敷島座
酒井淳之助・川上好子・近江二郎一座 お名残狂言
喜劇『嫁と嫁』一幕
時代劇『峠の馬子唄』二場
新派劇『狂戀』二幕
剣劇『抜き討ち■八』四場
籠寅まんざい
〔昭和15年6月28日付横浜貿易新報より〕

この後、近江二郎一座は名古屋〜大阪と巡演します(その先は不明)。大高よし男(高杉彌太郎)も一座に帯同しただろうと推定しています。

なお、この年によく共演していた川上好子は横浜の剣劇女優で、当時は26歳か27歳。こんな人です。

川上好子
(木村學司『女剣戟脚本集』(昭和15年発行)より)


昭和16年

(昭和15年)12月30日〜 横浜・敷島座
田中介二・和田君示・近江二郎合同公演
『漁村の曙』
『榮五郎日本晴』
『ちょんなめ長助大手柄』
〔昭和15年12月29日付神奈川県新聞より〕


1月?日〜13日 横浜・敷島座
田中介二・和田君示・近江二郎合同公演
現代劇『鳩の家』
『忠治子守唄』 ※高杉彌太郎出演の記載あり
『粗忽使者御前■仕合』
〔昭和16年1月10日付神奈川県新聞より〕


1月?日〜21日 横浜・敷島座
田中介二・和田君示・近江二郎合同公演

『天下の手品師』
『兵隊さん 有難う』四景 ※高杉彌太郎出演の記載あり
『春風二度の雁』
〔昭和16年1月19日付神奈川県新聞より〕


1月29日〜 横浜・敷島座
田中介二・和田君示・近江二郎合同公演
現代劇『岩に咲く花』五場(小島政二郎原作)
時代劇『東海の顔役』五場
『浮世長屋とぼけた連中』
籠寅特選まんざい
〔昭和16年1月29日付・1月30日付神奈川県新聞より〕


2月5日〜11日 横浜・敷島座
田中介二・和田君示・近江二郎合同公演

現代劇『岩に咲く花』後編 五場
『香椎馬方』三場(一堺漁人作)
時代劇『次郎長受難』九場
まんざい
〔昭和16年2月5日付・2月10日付神奈川県新聞より〕


2月12日〜18日 横浜・敷島座
田中介二・和田君示・近江二郎合同公演
『一心太助大賣出し』四場
時代劇『森の石松代参』六場
現代劇『家なき児』四場
まんざい
〔昭和16年2月12日付神奈川県新聞より〕


2月19日〜25日 横浜・敷島座
田中介二・和田君示・近江二郎合同公演(八の替り)
時代劇『追分の仇討』四場
現代劇『呼子鳥』四場
『狐に踊らされた彌次喜多』八景
まんざい
〔昭和16年2月19日付神奈川県新聞より〕


2月26日〜3月4日 横浜・敷島座
田中介二・和田君示・近江二郎合同公演
日満親善劇『甦へる人生』四場
現代劇『あゝ無情』一幕
時代劇『鬼吉喧嘩状』七場
まんざい
〔昭和16年2月26日付神奈川県新聞より〕


3月5日〜11日 横浜・敷島座
田中介二・和田君示・近江二郎合同公演
『鯨と争ふ金太郎』一幕
時代劇『仁吉男の唄』五場
現代劇『土と青年』全篇
まんざい
〔昭和16年3月5日付神奈川県新聞より〕


3月12日〜18日 横浜・敷島座
田中介二・和田君示・近江二郎合同公演

時代劇『風吹き鴉』三場
勤王劇『武士の血』一幕 ※高杉彌太郎出演の記載あり
軍事劇『噫!鐡火部隊』五景
〔昭和16年3月12日付・3月17日付神奈川県新聞より〕


3月19日〜25日 横浜・敷島座
田中介二・和田君示・近江二郎合同公演

現代劇『明けゆく一家』二場
『とぼけた仇討』七景
時代劇『身代り春太郎』五場
まんざい
〔昭和16年3月21日付神奈川県新聞より〕


3月25日〜30日 横浜・敷島座
田中介二・和田君示・近江二郎合同公演
 お名残狂言
『犠牲の舟』一幕
時代劇『泣くな左門』三場
現代劇『闘ふ男』四場
漫才
〔昭和16年3月26日付神奈川県新聞より〕

この後、近江二郎一座は大阪〜名古屋〜岐阜と巡演。大高(高杉)が同行していたかは不明ですが、可能性は高いと思われます。


9月1日〜7日 横浜・敷島座
松園桃子一座(高杉彌太郎加入)

『仇討叢雲峠』七場
かぼちゃ部隊『梅の井ショウ』
人間ポンプ 有光伸男
籠寅漫才大会
〔昭和16年9月15日付神奈川県新聞より〕


9月?日〜25日 横浜・敷島座
松園桃子一座
『仇討馬鹿囃子』
人間ポンプ 有光伸男
〔昭和16年9月24日付神奈川県新聞より〕


9月30日〜 横浜・敷島座
林長之助一座・酒井淳之助一座・松園桃子一座 片岡松右衛門特別出演
『生寫し朝顔日記』
『任俠茂三時雨』
『繪姿巴草紙』
籠寅演芸部特選漫才
〔昭和16年9月29日付神奈川県新聞より〕


10月8日〜14日 横浜・敷島座
林長之助一座・酒井淳之助一座・松園桃子一座
『朱房仁義』五場
『玉藻前三段目』一幕
『徳さん■■■』五場
〔昭和16年10月8日付神奈川県新聞より〕


10月15日〜21日 横浜・敷島座
林長之助一座・酒井淳之助一座・松園桃子一座
『■の門松』一幕
『あばかれ行燈』四場
『カクテルショウ』
漫才
〔昭和16年10月15日付神奈川県新聞より〕

※これ以降の公演に高杉彌太郎が参加していたかどうかは不明ですが、11月の新聞記事に名前が出ることから、参加していたとするのが妥当だろうと推定しています。


10月31日〜11月6日 横浜・敷島座
林長之助一座・酒井淳之助一座・松園桃子一座
『狂■お■■』三場
『壷坂霊験記』三場
『士魂』四場
〔昭和16年10月29日付神奈川県新聞より〕


11月7日〜13日 横浜・敷島座
林長之助一座・酒井淳之助一座・松園桃子一座
『故郷の仇夢』二幕
『合邦ケ辻』一幕
『旅姿一本刀』三場
漫才各種
〔昭和16年11月5日付神奈川県新聞より〕


11月21日〜 横浜・敷島座
林長之助一座
・酒井淳之助一座・松園桃子一座
『伽羅先代萩』 ※高杉彌太郎出演の記載あり
〔昭和16年11月24日付神奈川県新聞より〕


(興行は以下のように続きますが、大高が参加していたかどうかは不明)

11月29日〜12月6日 横浜・敷島座
林長之助一座・酒井淳之助一座・松園桃子一座
『小鼓狂亂』二幕
『忠臣蔵』三幕
『仇討兄弟鑑』五場
〔昭和16年11月26日付神奈川県新聞より〕


12月8日〜 横浜・敷島座
林長之助一座・酒井淳之助一座・松園桃子一座 雲井星子(一座?)
『■■七』三場
『引窓』
『縁結揖■川堤』四場
漫才
〔昭和16年12月8日付神奈川県新聞より〕



→つづく


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